2005, by 坂江真(現代書林)
2002年12月の真夜中、暖房器具のない部屋は凍えるようで、東京の冬は寒いなあ、などと考えていたらどんどん目が冴えてきてしまった。それでもなんとか眠りにつこうと僕は布団にくるまっていたけれど、全然ダメだった。
枕元にあるスタンドのライトを点けたら少しは温かくなるかもしれないと思いスイッチを入れると、光の傍らに『COTTON 100% 狂人の旅』が浮かび上がってきた。借りたまま、ずっとそこに放置されていたのだ。手にとると光の中に埃が舞った。ドギツイ表紙に、狂人と旅…僕はおそるおそるページを捲った。
いっきに読み終えた。本を閉じて口に出した言葉は『なんなんだこれは…?』
今まで読んできた小説、町田康、ドストエフスキー、ポール・オースター、井伏鱒二、村上春樹、筒井康隆、山田詠美、宮本輝…etc とにかく今まで僕が読んできた作品とは、根本的に、決定的に何かが違っていた。うまく伝えることは出来ないけれど、文章テクニックとか表現技法とか、そんなものを突き抜けたところにある何か得体の知れないモノを感じた。僕は、その得たいの知れない何かの正体を探ろうと何度も読み返していた。
時間の感覚は既に失われていて、体中のあちこちが痛くなってきて、ようやく本を閉じる。ベランダのシャッターを開けると、外はすっかり明るくなっていた。世界はあまりに眩しくて、綺麗に見えて、なんだか泣きたいような気持ちになった。
『COTTON 100%』の中で語られる様々な言葉達が、頭の中でぐるぐるになり、こころ(こころなんてものがあるのかどうかは判らないけど)に染み入るような感覚を覚えた。そして、体の中にすっかり力が戻っているのを知った。
僕はこの時、いつかこの本を復刊させてやろうと自分自身に誓う。そして…