『COTTON 100%』復刊までの道のり <前編>

2005, by 坂江真(現代書林)

高校入学から大学卒業までの八年間(一年間の浪人生活あり)、それなりに大変な事もあったけれど、とにかくいろんな事が楽しくて、僕は毎日夢を見ているような感覚で日々を過ごしていた。そんな生活に脳ミソも体も浸りきってしまった僕は、生きているという現実感のようなモノがどんどん希薄になり、まるで漫画の世界の住人のような感覚になっていた。そして、なんでも自分の思い通りになるような感じすらしてきて、色んな意味で重症だった。

2002年4月、卒業と同時に東京のある会社に就職する。
働き始めて二ヶ月くらい経ち、仕事もある程度思い通りにこなせるようになってきて、これはこれで刺激的だし、悪くないなあと感じ始めてきた頃、僕は、永遠に続くように思われた夢から目醒めてしまうのだった。

なにぶん、漫画の世界の住人だけにとにかく夢見がちだった。会社や仕事に対してもある種の理想をもっていたため、僕は暫らくして様々な事に疑問を感じ始める。(今思えば勝手な理想だったかもしれないけど)色々な事に慣れてくるにつれ、組織の仕組みや、そこに働く人たちの色々や、そこに渦巻く黒い思念のようなものを身をもって感じた。

『自分はここにいたらダメになる』という思いが日増しに大きくなっていって、ある時、僕は夢から醒めた。世界(会社)と自分との間に横たわる大きな溝を感じてしまった僕は、もう組織を抜けるしかなかった。 会社を辞めた僕は、もう以前の自分とは違ってしまっていた。世界のあらゆる事物がリアルに感じられて、今まで夢の中でぼんやりと生きてきた自分に強く、重く圧し掛かってきた。なんとなく今までのツケを払っているような感じがした。

会社を辞してから数ヶ月、バイトと貯金でなんとか食いつないでいたが、とうとうお金も底をつきかける。これからは、今までに以上に節約をしなければならないと覚悟決め、僕はほとんど外出をしなくなった。
電気も極力点けない真っ暗な生活の中で、自分がこれから先どこへ向かって進むべきなのかまったく判らなくなってしまった。道がなくなったと思った。

正直いってこのままでは大変なことになると思った。
こんな生活を送る僕に、みかねた友人が一冊の本を渡してくれる。
それが『COTTON 100%』だった。