『アジアに落ちる』 by AKIRA(杉山明) -解説

アジア_地図

一九九九年に新潮社から出版された「アジアに落ちる」は、講談社ベストエッセイスト賞の最終候補に選ばれ、読者に強烈な印象を与えました。

笑い、泣き、怒り、焦り、悲嘆し、放心する……の連続で、一行一行まったく飽きさせない筆力に唖然。無数にあるアジア旅行記の中でも、これほど「人間」の洞察が鋭いものにはなかなか出会えない。随所にはさまれるスケッチも心を突きまくる。(「SWICH」書評より)

アジアにむかう旅人はこの本をバックパックにほうりこみ、ボロボロになるまで何度も読み返し、インドでもタイでもおよそ日本人が集まる宿には手垢で擦り切れた「アジアに落ちる」がころがっていました。
 絶版になったあとも、アマゾンコムでは値段が急騰し、一万円以上で取引されることもめずらしくありませんでした。 もともと旅行記の賞味期限は非常に短いものです。世界はめまぐるしく変化しているし、ガイドブック的なエッセイはあっという間に消えていきます。

ではなぜこの稀有な旅行記だけがこれほどまでの支持を受けつづけるのでしょう?

それは「アジアに落ちる」が心の旅のガイドブックだからです。
 旅行記の古典である「深夜特急」や「全東洋街道」とは対照的に、「アジアに落ちる」は登場人物の心理に情け容赦なく踏み込んでいきます。読者の頭をわしづかみにするように人間存在の深淵をのぞきこませ、生の意味を、死の意味を、突きつけてくるのです。
 これほどまでに人間の深みを描ききった旅行記は今まで例がありません。世界情勢がどう変化しようと、人間が普遍的である限り、この本も色あせることがないでしょう。
 わたしはどうしてもこの旅行記を現代に蘇らせたかったのです。

だれもが気軽に海外へ行けるようになった今、わたしたちの旅は新しい段階へさしかかっています。息抜きのバケーションから、心の旅へと、進化を迫られているような気がするのです。
 「アジアに落ちる」には、新しい時代の旅へのヒントがぎっしりとつめこまれています。何度読み返してもあらたな発見があり、読者の成長とともに理解されていく無限の深みがあります。
 生と死という重いテーマにもかかわらず、あたたかいユーモアと心地よい疾走感に満ち、あっという間に読み終わってしまいます。
 ランダムにページを開き今日一日を生きるヒントにつかってもいいですし、精神世界の手引きとして読まれてもいいでしょう。

アジアへ旅立つ若者や熟年層の人たちには少なくとも二冊の本をバックパックやスーツケースに滑りこませてください。一冊は地理的な旅のガイドブック、もう一冊は心の旅のガイドブック「アジアに落ちる」です。
アジア以外に行く人にも、本書は旅のバイブルとして心の糧になると信じています。

最後にわたしのわがままを快諾して下さった、めるくまーる社の和田氏と太田氏に感謝を捧げます。


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